コラム
ピアノは、個人宅はもちろん、学校やホテル、ショッピングモールにも設置してあるなど、身近な楽器ですよね。しかし、小さいころ習っていたという方も、ご自宅のピアノは長年放置してしまっているのではないでしょうか。
久しぶりにピアノを弾いてみると、なんだか違和感を感じませんか?「こんな音だったっけ?」、「なんだが鍵盤が重い。」、はたまた「全然弾けない。」などなど。もしかしたらそのピアノはサビ取りが必要かもしれません。ですが一体、ピアノにサビとはどういうことでしょうか。
今回は、ピアノにサビが発生する原因からピアノのメンテナンスまで、詳しくご紹介いたします。大切なピアノだからこそ、きちんと管理して長く愛用していきましょう。
目次
ピアノは鍵盤楽器です。ピアノの鍵盤を押すと中にあるハンマーが弦を打ち、音が出ます。弦はギターやヴァイオリンと同じく金属のワイヤーです。金属ですから経年劣化しますし、場合によってはサビも発生します。
また、ピアノは弦以外にもチューニングピン(弦の張りを調整する部品)やピアノフレーム(骨格)など、見た目よりも多くの金属パーツで構成されている楽器なのです。
サビが発生する原因、それは湿気です。湿度の高い部屋や結露のおきる場所、水辺付近や飲食店など、ピアノの設置場所によってはサビが発生しやすいのです。ピアノは構造上、空気の循環が悪く、湿気がこもりがちになっています。
夏場、高温多湿となる日本の気候では、長期間弾いていないピアノはどんどんサビがすすんでしまうのです。そして弦や金属パーツだけでなく、木やフェルトなど、ほかのピアノパーツも湿気の影響を受けて、音質が劣化してしまいます。このように、ピアノにとって湿気は大敵なのです。
ピアノを設置する場所は、湿度や温度に配慮が必要です。直射日光やエアコンの風が直接当たらない、風通しがいい場所に設置しましょう。そして、晴れた日には、ピアノの天板を開けるなどして、内部にも風を通しておくとよいでしょう。
サビが発生しているピアノは、音質が悪くなります。音に響きがなくなり、まっすぐな音にならず本来のピアノの音色が失われてしまいます。それだけでなく、鍵盤が滑らかに動かず、タッチが重くなるなど演奏しにくくなります。そして、サビが発生している弦は切れやすいのです。
ピアノの弦のサビ取りはできるのでしょうか。サビの症状が軽度であれば、サビを落とし、防錆油(ぼうせいゆ)を塗布することで対処できます。
定期的に調律を頼んでいて、簡単に落とせるようなサビであれば、対処してくれる調律師もいます。一方、弦に油が塗られることで、音の伸びが悪くなると敬遠する調律師もいるようです。ピアノの弦のサビ取り対応までしてもらえるか、そのときどきで確認するようにしましょう。
また、重度のサビであれば、弦の張り替えが必要になるでしょう。もし、全部の弦を張り替えするとなると大変です。自宅で作業してもらうことは難しいので、いったんピアノを引き取ってもらいましょう。修復には、1、2か月ほど時間がかかるようです。
こういったピアノ内部の弦やチューニングピンの錆び取りは、専門家でないと難しいものですが、だれにでもできるピアノのサビ取りがあります。それは「ペダル」のサビ取りです。
ピアノのペダルは、銅と亜鉛の合金である真鍮(しんちゅう)でできています。長年使っていると、くすみやサビが発生することがあります。ペダルが錆びていても機能には大して影響はありません。しかし、大切な楽器です。ご自身で対処できるところは、きちんとメンテナンスしてあげましょう。
まず、作業時にピアノを傷つけないように、ペダル周辺の側面をマスキングテープで養生しておきます。そして、床を汚さないよう、ペダルの下に新聞紙など敷いておきましょう。スチールウールや耐水ペーパーで削るようにサビを落としていきます。
サビが取れたら、布に金属磨きの金属磨き剤をつけて磨いていきます。仕上げにツヤ出しクロスで磨きあげれば完了です。それほど難しい作業ではなく、必要なものもホームセンターで簡単に手に入れることができます。ピアノ専用のメンテナンス用品もあるので、チェックしてみてください。
ピアノは大きな楽器です。自宅にあればその存在感から、きちんと掃除していないと汚れが目立ってしまいます。しかし、汚れは外装だけではないのです。長年放置しているピアノ内部にも汚れが蓄積されています。
グランドピアノだけでなく、アップライトピアノも音を開放させられるように、上部や上前板を外すことができます。こういった隙間からピアノ内部に簡単にほこりは入り込み、溜まってしまっているのです。ピアノ内部に、ほこりが入り込まないように、こまめに掃除をして表面のほこりはしっかり払いましょう。
ピアノに湿気は大敵です。湿気によって金属パーツが錆びるだけでなく、カビが発生する可能性もあります。湿気対策をしていない、また長期間ピアノの内部を風通ししていないのであれば、カビが発生していても不思議ではありません。では、どうすればよいのでしょうか。
ピアノの設置は背面を壁から10cm以上開けて設置します。また、防音・防振用のピアノインシュレーターを使用することで、ピアノ下に隙間をつくることができます。このように、床より少し高くピアノを設置しておけば、風が通りますし、掃除もしやすくなります。
夏場は除湿器を使用するなどして、湿度管理をしましょう。「ダンプチェイサー」というピアノ防湿器もあります。晴れた日にはピアノの上部や上前板を外して、風を通しておきましょう。
そして恐ろしいことですが、ピアノ内部にネズミが侵入してしまうこともあるのです。ピアノ内部には、ネズミの寝床の材料になってしまうフェルトやクロスがあります。長期間弾いていないピアノ内部は、ネズミにとって快適な住環境なのです。
ネズミだけではありません、ゴキブリなどの害虫の巣になっていることも考えられます。長年ピアノを弾かずに放置していると、何が住みついてしまっているかわかりません。
ピアノを楽器として楽しむためにも、きちんと手入れをおこない、専門家による定期的な調律とメンテナンスが必要なのです。
ピアノは弦楽器ですので、チューニングが必要です。ギターやヴァイオリンと異なり、ご自身でチューニングすることはほとんどないと思います。多くの場合、ピアノの調律師に依頼しているでしょう。
ピアノは最低でも年に一度は調律が必要です。もちろんピアノによっての個体差もあります。使用する頻度や設置されている環境によっては、もっと短い間隔での調律が求められることもあります。新品のピアノや引っ越し直後の場合、3~4ヶ月に一度調律することが望ましいとされています。
プロの音楽家を目指し一日何時間も練習し、その音感も研ぎ澄ませていたいのなら、頻繁に調律を頼むことになるでしょう。ピアノを趣味でたしなむ程度であれば、半年から年に1度の調律で十分といえます。
調律師に依頼するのはコストがかかるので、自分でしたいと思われる方もいるかもしれません。ヴァイオリンは4弦、ギターは6弦ですが、ピアノは何弦あるかご存知ですか?鍵盤が88鍵ですので、弦も88本なのでしょうか。
実は型にもよりますが、ピアノは230本前後の弦が張ってあります。この数を聞いただけでも、専門家に任せるべきだと感じるでしょう。また、ピアノの調律は音感がいいだけではできないのです。ピアノのメカニズムを把握していないと、きちんと音程に合わせることはできません。
そして、ピアノの調律師は音の調律だけではなく、修理も学んでいるピアノの専門家なのです。調律を頼むことで、弦のサビにも対応してくれ、適切なメンテナンスのアドバイスを得られます。
ピアノの調律は音階だけの調整ではなく、ピアノを長く楽しむためには欠かせない定期健診でもあるのです。
ピアノの調律は購入店で手配してもらったり、ピアノを習っている講師からの紹介してもらったりということが多いのではないでしょうか。一度頼んでしまえば、定期的に訪問時期をお知らせしてくれますし、紹介元が確かなので安心できるというメリットもあります。
しかし、紹介の場合だとあまり相場を把握せずに、言い値で支払ってはいませんか。定期的に必要になる調律ですので、やはりコストは気になるものです。まずは、相場を知っておくべきです。
インターネットの見積りサイトは非常に便利です。ピアノの調律なのか、修理なのか、具体的なケースに応じての料金を事前に把握することができます。また無料で相談することも可能です。
調律を依頼すると、調律士が自宅に訪問して、大切なピアノに触れることになります。しっかりした技術と、安心できる人物への依頼が必要になるでしょう。コスト面だけではなく、信頼できる業者を見極めることも重要です。
大切なピアノだからこそ、定期的にメンテナンスをすることが求められます。いざ弾こうと思っても、弦が錆びて音が出なくなってしまえば、楽器としての役目を果たせません。
メンテナンスには費用がかかりますが、弦の全張り替えやピアノの新規購入に比べれば、決してコストが高すぎることはありません。比較サイトなどを利用すれば、よりお得な業者が見つかるでしょう。
ご自身でもピアノを長持ちさせるためにできることがあります。こまめにほこりを払い、湿度に注意して定期的に風を通しておけば、いつまでもピアノを楽しむことができるのです。
ピアノは豊かで理想的な家庭の象徴でもあります。せっかくご自宅にピアノがあるのであれば、放置せず、大切に扱ってあげましょう。