コラム
ピアノを弾いている人であれば、ピアノ内部に張られているピアノ線を見たことが1度はあるかと思います。しかし、ピアノ線はどんなものであり、役割をしているのかを知っていますか?そして、ピアノ線が切れた場合にどうすればよいのかを理解されていますか?
なかなかピアノを弾いていても、しっかり把握していない部分もあるかと思います。そこで、今回はピアノ線とは何なのか。その役割をお伝えし、もし切れた場合の対処法もご紹介します。
ピアノ線とは、ピアノの弦として使用されている銅線を指します。ピアノは、このピアノ線が張られた部分をハンマーでたたくことで音を出しており、ピアノ線は1本あたり70~80キログラムという強い力によって引っ張られています。
そのため、ピアノ線には高い強度が求められ、炭素含有量が0.60~0.95%と冷間加工の炭素同線の中では最も強度がある銅線を使用しています。そして、強度だけでなく、耐久性・疲労強度をもっているのも特徴です。
一見、ピアノ線は硬鋼線とよく似ており区別がつきません。しかし、ピアノ線は手間暇をかけて、不順物などの規定が厳しく定められている高級材料であり、硬鋼線は特に規定がなく一般材料として扱われています。そのため、価格はピアノ線のほうが高くなります。
使用用途としては、ピアノ線はピアノの弦や精密機械のバネとして使用されていますが、硬鋼線は雑貨やシャッターなどの身の回りにあるバネに使用されています。
弦は音の質と関係が深いです。真円度が高いことなどが求められるため、ピアノ線材を認められたピアノ線は18種類しかありません。
ピアノ線は強度な強度をもっていますが、長年使用していると劣化してきます。ピアノの線の寿命は約20年といわれていることもありますが、はっきりとは決まった寿命年数はありません。そのため、「弦が切れてしまったら寿命が来た」ということになり、交換が必要となります。
弦が切れるまではオーバーホールを行うことで、ピアノ線や内部の状況を把握してその都度修理していくことが長くピアノを使用するために大切なこととなります。
オーバーホールとは、古くなったピアノを新品のように使用できるようにすることであり、弦を張替たり、ハンマーやダンパーフエルトなどピアノ内部の部品を交換したりすることでピアノの音色も輝くものにしていきます。
ピアノ自体の寿命は人間と同じで、しっかりオーバーホールやメンテナンスをすれば100年以上も伸ばすことが可能なのです。
また、ピアノ線はA種・B種・V種と3種類あり、V種はばねの素材としての利用を想定して作られています。AとB種は楽器用として利用されており、B種のほうが強度は高くなっています。ただ、強度が高くなるにつれて加工しにくくなるので、用途によって選んで使用されています。
もし、ピアノ線が切れたときどう対処したらよいのかをご紹介します。
まずピアノ線が切れたら、ピアノを弾くのをやめましょう。なぜならば、切れたピアノ線が他のハンマーに絡まったりするのを防ぐためです。特にダンパーという繊細な部品に絡まると故障の原因になることも考えられます。故障してしまうと、さらなるピアノの修理が必要になり、修理代金もかかってしまうので注意しましょう。
次に、切れたピアノ線は捨てずに残しておき、ピアノ修理業者に依頼しましょう。切れたピアノ線は、新しく張り直しするときに太さや製造番号・製造メーカーを知るために必要なものです。
切れたピアノ線は使用しないからといって捨てないように気をつけましょう。何番目のピアノ線が切れたのかが修理依頼時にわかっていれば、さらに修理がスムーズに進みます。可能な場合は確認後に業者に依頼しましょう。
ピアノ修理業者に依頼するときに、どんな業者に依頼したらいいのか迷ってしまう方もいるかと思います。そこで、業者選びのポイントをお伝えします。
ポイントとしては4点です。
1.自社の修理工場をもっている他社に修理を下請け業者に委託している業者の場合は、その分料金が高くなります。そして、どんな修理をしたのかを把握しにくいので不安が残ることも考えられます。そのため、自社で修理工場をもっている業者のほうがコストを抑えて、修理内容もしっかり確認できるでしょう。
2.純正のパーツを取り扱っている純正パーツと代替えパーツがあり、質が異なります。ピアノのタッチ感や音色に影響を及ぼす可能性があり、修理後の演奏に支障が起こってしまっては大変です。純正パーツを取り扱っているかを確認してから依頼しましょう。
3.修理の知識と経験が豊富であるピアノの修理には知識と経験が重要となるので、よい技術者を選ぶためにインターネットなどでその業者の修理事例などを確認しましょう。
4.複数社に見積もりを出してもらうピアノの修理によっては、新しく購入したほうが安くなることもあります。そのため、修理前に見積もりを出してもらいましょう。複数社出してもらうと比較できるので、コストを抑えることができます。
ピアノが切れたり古くなった場合に、張り直しをする方法をご紹介します。
1.切れたピアノ線や張替えるピアノ線を取り外します。ピアノ線を張っているときの総張力はとても強いので、何も考えずに外していくとピアノ本体やフレームに大きなストレスをかけてしまいます。そのため、すべてのピアノ線を張り直す場合はバランスよく張力を弱めていきます。
2.弦圧を測定弦を外した後には、糸で弦圧を測ります。こうすることで、どれぐらいの弦圧から解放されたかを確認できます。
3.新しいピアノ線を張るピアノ線には種類があり、高温になればなるほど銅線は細くなり、低温になればなるほど銅線が太くなります。弦の太さによって張力が異なるのでしっかり確認して張っていきます。
4.チッピング作業ピアノ線の間隔をそろえたら、チッピングという作業を行います。ピアノ線専用の道具で、弾きながら音を合していく作業です。新しいピアノ線はどんどん伸びていくのでしっかりと音合わせをします。このときに、張力がかかってきます。
今回はピアノ線についてご紹介してきました。ピアノ線は強度をもち、耐久性や疲労強度をもっています。ピアノの弦として、張るときの力にも十分に耐えられるものとして基準がある銅線ということでした。そして、ピアノ以外にも精密機械のバネとして使用されており、高級な線材ということもわかりました。
しかし、長年ピアノを使用していれば、張力に耐えかねたピアノ線が切れることが考えられます。もし、ピアノ線が切れた場合はすぐに演奏を止めて業者に依頼しましょう。ピアノ修理業者にもいろんな業者がいます。しっかり、料金や知識、経験などを考慮して選びましょう。